Augurで課せされる手数料の問題

原文:Fees, Fees, and… Fees?

※以下の内容は上記原文の日本語訳です。

現在のAugurには本当に解決すべき重大な問題があります。それはユーザーエクスペリエンスです。私は常日頃から「ローンチ直後のAugurは、動作は遅く、コストがかかり、使いづらい」と言ってきました。ローンチ時点での目標は、大きな制約がありつつも基本的機能が正常に動作することでした。ローンチを終えた今、三つの解決すべき問題があります。

Augurが本質的にはマーケットのプラットフォーム/プロトコルであることを考えると、経済学的観点からは問題ないように思えます。Augur利用時の難解さは開発者のプラット―フォーム改善によって時間と共に解決するでしょう。処理速度の問題は、0x trading、state channels、Plasma、レイヤー1のスケーリングによって改善されるでしょう。しかし、手数料についてはどうでしょうか?


現在、Augurを使用する場合に以下の手数料を支払わなくてはなりません。

・ETHを入手するための手数料(Coinbaseの場合デビットカード使用手数料4%と、ACH(Automated Clearing House:小口決済で用いられる送金ネットワーク)手数料1.5%)
・ETH自体のボラティリティ(1日当たり約5%)。これはAugurでDaiがサポートされるまで解決しない
・レポーティング手数料(現在約0.01%でありとても低いが、長期的には1%に近づく見込み)
・マーケット作成者手数料(約1~2%)。この値は時間と共に0%に近づく見込み
・Ethereumのgas費($100あたり約3%)。これはEthereumのネットワークがスケールすれば改善する見込み

ボラティリティをヘッジし(手数料として資金の約1.5%かかるとする)、ACHを経由してGDAXで購入し(知る人はほとんどいないがこの方法で手数料は0)、手数料1%のマーケットを利用し、多額のオーダー(例えば500ドル)を行うことでgas費は約1%となります。

これらを合計すると手数料は3.5%です(手数料は全ての取引ではなく、オープンインタレストに応じて課せられるわけですが、ここでは世間一般の手数料と比較するために簡素化しています)。上記のすべてとEthereumの速度を考慮すると、スプレッドの+2%を加味した5.5%がベストシナリオでしょう。

ワーストシナリオ(あるいは一般的シナリオかもしれません。なぜならば一般ユーザーは上記の手数料を節約する術を知らないからです)は、Coinbaseで購入し(4%)、ETHのボラティリティのリスクヘッジをせず(例えば1日に3%のコストが発生するとする)、手数料が高いマーケット(2%)で取引を行い、少額のオーダー(3%)を行うケースです。このシナリオでの手数料は12%で、さらにスプレッドの+2%を加味すると合計14%になります。

それでは、これらの手数料と暗号通貨界隈以外の手数料を比較してみましょう。英国のBetfairなどのブックメーカーの払い戻し率は約92~93%です。Augurでは手数料はオープンインタレストに応じて課せられるため、この払い戻し率と直接比較することが可能です。従って、Augurのベストシナリオでは払い戻し率は94.5%であり、ワーストあるいは一般的シナリオでは約86~88%です。この数字こそが現時点でAugurが普及していない理由です。

そしてさらに考えてみなくてはならい事が二つあります。一つは、手数料はどれぐらい下がればAugurは普及し、あらゆる物の予測市場と成り得るのか。そして二つ目は、現時点でAugurを利用することは合理的なのか、という点です。


上記5種類の手数料の内、レポーティング手数料はとても少額のため無視することにして、残り4つについて考えてみます。

暗号通貨を購入する場合の最もポピュラーな方法はCoinbaseを利用することです。ETHを購入する場合、まずドル(または他の暗号通貨)を預け入れる必要があります。ACH経由でドルを預け入れる場合の手数料は1.5%です。一般的な外国為替サイトでACHを利用する場合その手数料は無料であることがほとんどであるため、このCoinbaseの手数料はとても高額です。さらに、デビットカードを使用して購入する場合は4%の手数料が加算されます。対して外国為替サイトでの手数料は0~0.05%です。暗号通貨は不正行為を行われる可能性が高いということは、Coinbaseが企業として収益を上げなくてはならないという事実と同じようにデビットカードの手数料が高いことも説明が付きます。もしCoinbase Pro / GDAXを使えば、ACHの手数料は0になります。

理想としてはもっと競合他社が出現し、Coinbaseにおける一般ユーザーのACH手数料が0になることです(そしてCoinbaseはその収益を失うため、交換業による収入を主力とするでしょう)。さらに、ICEが設立した新会社Bakktのような競合他社が出現することで、Coinbase Pro / GDAXを利用する専業トレーダーだけでなく、一般ユーザーのACH手数料も0に近づくはずです。

ボラティリティ問題を解決する最も簡単な方法は、Daiのような暗号通貨をマーケットで採用することです。DaiはETHによるボラティリティリスクを排除し、マーケットの使用コストを効果的に下げます。今後のAugurのリリースではこの機能が実装されるでしょう。

マーケット作成者手数料については、時間が経過すれば収益限界値(つまり0)まで下がるはずです。マーケット作成者は、(他のマーケット作成者のマーケットよりも)自身が作成したマーケットにできるだけ多くのユーザーを誘致し、トレードを行わせたいと考えています。手数料が無料であればそのマーケットでトレードするユーザーは増えるでしょう。このマーケット作成者の希望から「マーケット作成者はどこで収益を上げるのか?」という疑問が生まれます。その答えは「マーケットの作成」と考えています。例えば、買い・売りの両サイドで注文を出し、マーケットに流動性を持たせつつ、スプレッドをチャージすることです。これは、通常のマーケットで人々が慣れ親しんだ仕組みによく似ています。

最後にEthereumのトランザクション手数料であるgasです。この手数料は、Ethereumが大勢のユーザーから使用されているにもかかわらず処理能力が高くない(1秒に数個のトランザクションしか捌けない)ため現時点では比較的高いです。Ethereumがスケールすればこの手数料が数ペニーまで下がるでしょう。

これら全てが実現すると、手数料は1%以下、払い戻し率は99%以上になります。


以上を踏まえて、現時点でAugurを利用することの経済的合理性はあるのでしょうか?

今のところAugurが最善の選択肢となっているユースケースがいくつかあります。例えばETH価格のデリバティブがそれです。

このマーケットのバイヤーは、GDAXを利用して手数料を0に抑える術を知った洗練されたクリプトユーザーであり、ETHのボラティリティを気にする人はいないでしょう。

そして案の定、Augurで最も人気のあるマーケットは以下のマーケットです。

“Ethereumの価格は2018年末に500ドルを超えるだろうか?”