【解説】決済手数料(settlement fee)

決済手数料(settlement fee)について解説します。

決済手数料とは、Augurのマーケットでトレーダーが支払わなくてはならない唯一の手数料であり、「作成者手数料(creator fee)」と「レポーティング手数料(reporting fee)」の2つから構成されています。

作成者手数料(creator fee)

マーケット作成者に対して支払う手数料です。マーケット作成者が作成時にのみ設定可能で、マーケット作成後に変更することはできません。支払いで使用される通貨はETHで、設定できる範囲は0~50%です。

高く設定する程、マーケット作成者は手数料収入増を期待してしまいそうですが、一方でトレーダーにとっては支払わなくてはならない手数料が増えるため、高すぎるとそのマーケットでのトレードが敬遠され、かえって手数料収入が減る可能性があります。作成者がこの手数料収入を増やすにはバランスの良い料金を設定する必要があります。

作成者手数料により、マーケットでのトレードが活発になるほどそのマーケット作成者の収入が増えるため、作成者がよりポピュラーなマーケットを作成するインセンティブとなります。Augurにとって重要な手数料です。

レポーティング手数料(reporting fee)

REPをステークしたユーザーに対して支払う手数料です。ユーザーが設定することはできず、Augurによって自動的に決定されます。支払いで使用される通貨はETHで、設定される範囲は0.01~33.3%です。

この手数料はローンチ時は1%に設定されますが、それ以降は「現在のREP時価総額」と「目標のREP時価総額」から、Augurが手数料額を自動的に設定します。

設定タイミングは、手数料期間(fee window)毎です。従って、7日に一度設定されます。

レポーティング手数料を決定するための計算式は次の通りです。

次のレポーティング手数料 = (目標のREP時価総額) / (現在の時価総額) * (現在のレポーティング手数料)

この式から言えることは次の通りです。

現在のREP時価総額 > 目標のREP時価総額
ならば、現在のレポーティング手数料よりも小さな手数料が設定されます。

現在のREP時価総額 = 目標のREP時価総額
ならば、変化はありません。現在のレポーティング手数料と同じ手数料が設定されます。

現在のREP時価総額 < 目標のREP時価総額
ならば、現在のレポーティング手数料よりも大きな手数料が設定されます。

「目標のREP時価総額」とは「未決済建玉(open interest)の7.5倍」です。なぜ7.5倍なのかはホワイトペーパーに詳細が書かれていますが、ホワイトペーパーの翻訳が分かりにくいため、後日かみ砕いて解説したいと思います。(翻訳したのは私です、すみません…)

決済手数料の徴収タイミング

トレードによってシェアの発行数が減少すると徴収されます。つまりトレードによってシェアがBurnされると徴収されます

シェアがBurnされるのは以下の2パターンです。
・未ファイナライズマーケットで全種類のシェアの売り注文が同数集まった場合
・ファイナライズしたマーケットでウィニングシェアの払い戻し(redeem)を行った場合

※シェアのBurnについては、前回の記事で詳細に書きましたので良かったらご覧ください。

逆に言うと、シェアがBurnされなければ決済手数料は発生しません。そのため、同じ売り注文でもマッチングするオーダーによっては、決済手数料が発生しないケースがあります。

どういうことか具体的に説明します。以下の2つの図をご覧ください。


図1.コンプリートセットの決済


図2.シェアとETHのエスクロー取引

各図の状況は以下の通りです。

図1
・AliceはシェアAを1個、0.8ETHで売りたい。
・BobはシェアBを1個、0.2ETHで売りたい。
・マーケットはファイナライズしておらず、オーダーブックは空。

図2
・AliceはシェアAを1個、0.8ETHで売りたい。
・BobはシェアAを1個、0.8ETHで買いたい。
・マーケットはファイナライズしておらず、オーダーブックは空。

どちらの図もAliceは「所有するシェアAを1個、0.8ETHで売りたい」と希望しており、結果、シェアの売却が成功したAliceは 0.8 ETH 手に入れている点も同じです。

異なるのはマッチング対象となったBobのオーダーです。

図1でのBobは「所有するシェアBを1個、0.2ETHで売りたい」と希望し、この注文がAliceの「シェアAを1個売りたい」とマッチングし、Augurで決済(settlement)が行われた結果、シェアがBurnされました。シェアがBurnされると決済手数料が発生するため、図1のケースではAliceはAugurに決済手数料を支払う必要があります(Bobも同様に支払う必要があります)。

図2でのBobは「シェアAを1個、0.8ETHで買いたい」と希望し、この注文がAliceの「シェアAを1個売りたい」とマッチングした結果、AugurによりシェアAとETHのエスクロー取引が行われました。この時シェアはBurnされておらず、シェアAの所有者がAliceからBobに代わっただけです。そのためAliceは決済手数料を支払う必要がありません(Bobも同様に支払う必要がありません)。

つまり、Aliceとしては図1、2のどちらも同じ売り注文を出し、同額のお金(0.8 ETH)を入手したにも関わらず、マッチングするオーダーによって売りに出したシェアが Burnされる/Burnされない が決まってしまったということです。シェアが Burnされる/Burnされない は、決済手数料が 発生する/発生しない ということに直結します。

以上が「同じ売り注文でもマッチングするオーダーによっては、決済手数料が発生しないケースがある」と述べた背景です。

AugurのUIでは「シェアをどのようにマッチングさせて売却するか」という選択肢は無いため、あらかじめ売り注文時に決済手数料込みで発注を行い、Burnされなければその手数料を発注者に返却する仕組みと思われます。運が良ければ決済手数料は支払わなくて済みますが、悪ければ支払う必要があります。

まとめ

・決済手数料は作成手数料とレポーティング手数料から構成される。
・作成手数料はマーケット作成者に支払われ、料金設定は作成者が行う。
・レポーティング手数料はREPをステークした人に支払われ、料金設定はAugurが行う。
・決済手数料を支払う人はトレーダーである。
・支払うタイミングは、トレードでシェアが減少した(=Burnした)時。
・トレーダーが支払う手数料は決済手数料のみであり、運が良ければ支払わなくて済む。

余談:中央集権的な予測市場の手数料はいくら?

既存の中央集権的な予測市場の手数料はどれくらいなのか調べてみました。

2018年5月27日に行われるUEFAチャンピオンズリーグ決勝「レアル・マドリード vs リヴァプール」のWilliam Hillでの勝敗オッズを見てみました。

オッズは以下の通りです。(2018/5/8現在)
・レアル・マドリードの勝ち:2.2倍
・引き0分け:3.6倍
・リヴァプールの勝ち:3.1倍

このオッズから還元率を求めると、
1 / ( 1/2.2 + 1/3.6 + 1/3.1 ) ≒ 94.8 %
であるため、William Hill側の取り分は
100 % - 94.8 % = 5.2 %
となります。つまり、5.2 % は賭けの当たり/ハズレに関係なく胴元の取り分となるため、私はこの割合を「中央集権的な予測市場の手数料」と解釈しました。

この手数料の観点で「AugurがWilliam Hillより優れている」と言うには、Augurの決済手数料が5.2%より小さくなる必要がありますね。