【解説】不参保証金(no-show bond)


Augurでは、マーケット作成者は以下の2つの保証金を支払わなくてはなりません。

・有効性保証金(validity bond)
・不参保証金(no-show bond)

今回はこの中の一つ「不参保証金」について解説します。

不参保証金とは

この保証金はマーケット作成時にマーケット作成者によってREPで支払われます。

マーケット作成時に設定した指名レポーター(designated repoter)がレポートを行えば、この保証金はマーケット作成者に返却されます。逆に、指名レポートが行われない場合は没収されてしまいます

指名レポートが行われないと没収されてしまうため、マーケット作成者には「指名レポーターにレポートしてほしい」という動機が生まれますが、他人に指名レポートを行ってもらうことはリスク(裏切りや失念)が伴います。従って、最も確実に指名レポートを行ってもらう方法は、マーケット作成者自身が指名レポーターになることです。

自身が指名レポーターになれば他人に任せるよりもリスクは低くなります。従って、この不参保証金によってマーケット作成者は指名レポーターに自身を指定するよう促されていると言えます。

没収された不参保証金の行方

指名レポートが行われなければ、その不参保証金は没収され、一時的にAugurに保有されます。

その後、指名レポートが行われなかったマーケットは公開レポーティングフェーズ(open reporting phase)に移行し、ファストパブリックレポーター(first public reporter)によるレポートが行われるのを待ちます。

不参保証金は、この公開レポーティングフェーズのレポート(=ファーストパブリックレポート)でステークするためのREPとして使用されるのです

従って、ファーストパブリックレポーターは不参保証金でステークするためのREPを保有している必要がありません

不参保証金の金額はどのようにして決まるか

不参保証金額は、ローンチ直後は0.35 REPが設定されています。その後、Augurによって手数料期間が終了する都度更新されます(つまり7日毎に更新されます)。ただし下限値は 0.35 REP が設定されており、この値を下回る金額に設定されることはありません。

不参保証金額は、直前の手数料期間において期限内に指名レポートが行わなかった割合に応じて増減します。

増減は1%を閾値として以下の通りです。

行われなかった指名レポートの割合 不参保証金額
1%より多い 増加する
1%より少ない 減少する
1%ちょうど 変化無し

では、具体的にどの程度増加/減少するのでしょうか。具体的に数式を用いて説明します。

※以下の計算式は過去記事【解説】有効性保証金(validity bond)【解説】指名レポーター(designated reporter)と指名レポーターステーク(designated reporter stake)とほぼ同様です。ご存知の方は読み飛ばしてください

まず、
ρ:直前の手数料期間における行われなかった指名レポートの割合
bρ:直前の手数料期間における不参REP保証金額
とします。

そして、調整するための関数 f を以下とします。
$$f(x) = \begin{cases} x > \frac{1}{100} & \text{の時、 } \frac{100}{99} x + \frac{98}{99} \newline x \leq \frac{1}{100} & \text{の時、 }50x + \frac{1}{2}\end{cases}$$
Augurのホワイトペーパーでは、これらの変数と関数を用いて、ある手数料期間の不参保証金額を以下のように定めています。
$$\max\{0.35, b_ρ f(\rho)\}$$
※max{x,y}とは、xとyのいずれかの大きい方の値、と言う意味です。

この式から以下のことが言えます。
・不参保証金は行われなかった指名レポートの割合1%を閾値として増減する。
・ρが100%(=全指名レポートが行われなかった)ならば、不参保証金額は2倍となる。
・δが0%(=全指名レポートが行われた)ならば、不参保証金額は1/2倍となる。


実際に式に値を代入して考えてみましょう。

1回目の手数料期間終了時に、
ρ:直前の手数料期間で行われなかった指名レポートの割合 = 10 % = 0.1
bρ:直前の手数料期間における不参保証金額 = 0.35 REP
だったとします。
ρ > 1/100 であるため、関数 f は以下となります。
$$f(0.1) = \frac{100}{99} * 0.1 + \frac{98}{99} \simeq 1.0909$$

さらに
$$b_ρ * f(0.1) = 0.35 * 1.0909 \simeq 0.3818$$
であるため、
$$\max\{ 0.35, 0.3818\} $$
となり、これを求めると不参保証金額は 0.3818 REP となります。(行われなかった指名レポートが1%を超過しているため保証金額が増加しました)


さらに2回目の手数料期間が終了し、
ρ = 20 % = 0.2
だったとすると、関数 f は以下となります。
$$f(0.2) = \frac{100}{99} * 0.2 + \frac{98}{99} \simeq 1.1919 $$

bρ = 0.3818 REP であったため、
$$b_ρ * f(0.2) = 0.3818 * 1.1919 \simeq 0.4551$$
となり、
$$\max\{ 0.35, 0.4551\} $$
これを求めると、不参保証金額は 0.4551 REP となります。(行われなった指名レポートが1%を超過しているため保証金額が増加しました)


さらに3回目の手数料期間が終了し、
ρ = 0.7 % = 0.007
だったとすると、ρ ≤ 1/100 であるため、関数 f は以下となります。
$$f(0.007) = 50 * 0.007 + \frac{1}{2} = 0.85$$

bρ = 0.4551 REP であったため、
$$b_ρ * f(0.007) = 0.4551 * 0.85 \simeq 0.3868$$
となり、
$$\max\{ 0.35, 0.3868\} $$
これを求めると、不参保証金額は 0.3868 REP となります。(行われなかった指名レポートが1%より少ないため保証金額が減少しました)

まとめ

・不参保証金はマーケット作成者により作成時にREPで支払われる。
・指名レポーターがレポートを行うと、マーケット作成者に不参保証金は返却される。
・指名レポーターがレポートを行わないと、マーケット作成者は不参保証金を失う。
・マーケット作成者から没収した不参保証金は、ファーストパブリックレポーターのステーク用REPとして使用される。
・指名レポーターにはマーケット作成者自身が設定される可能性が高い。
・不参保証金額はローンチ時は0.35REPだが、それ以降は手数料期間毎にAugurにより再設定される。
・設定額は期限内に行われなかった指名レポートの割合に依存する。
・行われなかった指名レポートが1%超ならば増額する。
・行われなかった指名レポートが1%未満ならば減額する。